日本における美術の社会的な人気は、他の芸術ジャンルに比べても圧倒的に低く、なかでも「現代美術」などは、首をかしげ「難解」だとか「わけがわからない」といったイメージを感じてしまう人が大多数なのが実情。他の欧米主要先進国等と比較しても、日本における美術の人気の低さは明白である。そんな日本の状況を風刺した内容の展覧会を、日本で人気のファッションストア・BEAMS JAPANで開催した。
 テーマは、現代美術の展覧会への観客動員。BEAMSによる宣伝広告力も利用して、客を増やすため様々な方法も画策し、インビテーションも凝ったものとした。もちろんできる限りの努力はするが、 ファッションでメジャーなBEAMS目当てに来る一般客動員に、太刀打ちできるはずもない。 そんなわかりきった状況を逆手に取って、全ての観客の動員を作品に利用してしまおうということが今回の展覧会のポイントであった。インビテーションは渡す以下8種類の相手によって部分的に色を変えた。
1.Artist
2.Curator,Gallerist
3.Critic,Writer・・・・批評家、ライター
4.Collector,Art lover・・・コレクター、愛好家
5.Mass Media・・・・マスコミ関係者
6.Designer, Illustrator, Architect
7.Student
8.BEAMS Network・・・ BEAMSやギャラリーの顧客
 本展覧会にとって一番重要なのは オープニング初日におこなわれるパフォーマンスであった。オープニング当日はアーティストである増山士郎が、BEAMS JAPANビル二階のショーウィンドーに入り、一階入り口ではスタッフがインビテーションの種類をチェックした。増山は入場チェックの様子を確認しながら、来店客の種類に対応する9つの交通量調査用カウンターで、それぞれの客の種類をカウントしていく。それぞれのアナログカウント数はデジタルデータに変換され、BEAMS JAPAN内のギャラリーで投影されるアニメーションにリアルタイムにかつインタラクティブに作用するのである。
 アニメーションはインビテーションを持参していない一般客の動員が10人に達した時点でスタートする。アニメの世界観は、大多数と予想される一般客が、不思議な世界へ団体ツアーで向かうという設定(ツアーの添乗員は増山士郎)で、展覧会目的の客(アート関係者)の動員により、それぞれに対応した敵キャラクターが出現し一般客を抹殺していくコンピューターゲーム的アニメーションである。つまりアートに興味がない一般客とアート関係者の2項対立によってゲームが展開し、一般客の動員が多ければツアーを無事最後まで楽しむことができるが、アート関係者の動員が多ければ、一般客は全て死にツアー半ばにしてゲームオーバーになってしまうというブラックな内容だ。BEAMSに来るほとんどの観客は、アニメーションやゲームが当たり前の世代である。そのような観客にも親しみやすいメディアを利用し、彼らの注目を集めようと試みた実験的プロジェクトであった。
 ギャラリー内での展示はメインとなるアニメの投影映像とともに、ショーウィンドーで利用しているアナログカウンターのリアルタイム映像、客のインビテーションの種類の映像が、それぞれ2つのテレビモニターで見られる。これらの展示によって全ての映像が相関関係にあることも、意図的にわかるような構成とした。