この展覧会より以前、増山は屋外でゲリラ的に作品を設置することを半ば趣味のように楽しんでいた。彼の興味の対象は、公共の場所に何か罠的な作品を置きそれにごく一般の人がからんで起こる反応だったのである。一般人が興味を示さない物を屋外に置いてもリアクションを得る事はできない。そこで、駆け引きや罠作りを周到に計画だて作りこんでいた。しばらくの間、増山はギャラリーや美術館での作品発表にはしばらく興味がなかった。ギャラリーに来場する美術に関心のある人が作品に反応するのはごく当たり前のことだからである。では、ギャラリーに来ない一般の人々をどうやって巻き込むか考えてみるのは、きっと自分にとって意味のあることではないかと考えた。その一つの方法として画廊と画廊の外を同時に使う展覧会を思い付いたのである。
公共空間に作品を置くことをいつも考えていた増山は、当然のように路上パーキングの存在に気づき、警察に作品設置が可能か問い合わせた。答えは「車以外のものは置いてはダメだ」とのこと。そこで増山は、トラックに作品を積み路上パーキングで見せることは可能ではないかと考えた。日本の路上パーキングの駐車可能時間は1時間である。制限時間を越えて車を駐停車すると「違法駐車」切符をとられてしまう。トラックで作品展示する場合、この1時間というタイムリミットが問題になるのである。同じ場所での継続的な駐車はパーキングメーターに設置された赤外線センサーの問題で不可能。合法的に駐車を行うためには1時間ごとに車を移動しなければならない。そこで増山は、1時間ごとに車の移動をパフォーマンスとして見せる展覧会をしようと考えた。こうして生まれたのが「合法駐車」である。パーキングと画廊をリンクさせるため、善良な市民の車を警察の違法駐車取締りから守る架空の部隊を設定、その部隊の基地が画廊というシナリオをつくりあげた。これは展覧会という名目で、如何にして合法的に道路を占有するかという目的を達成するため、法律の網の目を潜り抜けて行った合法パフォーマンスなのである。
展覧会は東京一の画廊の密集地銀座に存在するギャラリー現とその画廊真下に存在する路上パーキングを使って開催された。画廊 ( 本部 ) に設置された電光掲示板は外の路上パーキングに設置されたトラックが「違法駐車」になるまでのタイムリミットを赤色で表示している。「合法駐車」制限時間 60 分の減少に伴ってカウンターは刻々と変化し、0を示した瞬間サイレンが回りだし「Caution」ランプが点滅を始める。本部は一変して緊急事態に、待機していた部隊はこの時間切れを合図に直ちに出動し、トラックを警察の駐車違反キップから救済する。これらのパフォーマンスは展覧会期中1時間毎に行われた。
展覧会の案内状は現実の駐車違反キップのデザインをアレンジしたもの。電光掲示盤、構成員たちの制服や隊員証、活動紹介ビデオやパフォーマンスにいたるまで、アクション映画さながらの演出を徹底した。それがこの現実にはありえないパフォーマンスに真実味を持たせ、内部の非現実的空間(画廊)と外部の現実的空間(都市)をダイナミックにリンクさせることに成功した。
開催3日後に銀座築地警察から、「道路をこのような形での継続利用はやめて欲しい」とクレームが入った。しかしパフォーマンスはすべて合法であるため、警察は増山を逮捕することもトラックのレッカー移動もできず、注意だけに終わった。予定通り6日間やりきったのである。
路上パーキングに駐車されたトラックの荷台には画廊内部で出動待機する増山と同じポーズをした彫刻が搭載されており、トラックと画廊内部に視覚的な関係性をもたせようとした。トラック上の人物像は画廊内部の特殊部隊のコスチュームを身にまとった増山とは違いビジネスマンを彷佛させるスーツを着用している。







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