増山士郎は、街の中で一般の人々を巻き込んで行くゲリラ的なアートプロジェクトを次々に展開し、その緻密なプランと意表をつくアプローチによって、近年国内のみならず国外でも注目を集めているアーティストです。
ギャラリー前の路上に落ちている500円硬貨。通行人がそれを拾い上げるや否やスイッチが入り、けたたましいカメラのシャッター音とともにストロボの閃光が点滅、まんまと罠に掛かった当人の驚く様子がビデオで隠し撮りされてしまう作品、その名も「ITAZURART2000」。
河川敷に沿って2人掛け専用の仮設小屋式ベンチを等間隔に設置し、カップルたちが堂々と愛を営む場所へと変貌させてしまう「多摩川河川敷プロジェクト」。
渋谷で行った「生けモク」プロジェクトでは、待ち合わせの名所であるモヤイ像前にウニのように針の突き出たスタンド式オブジェを設置。待ち合わせの人々が次々とタバコの吸い殻(シケモク)をまるで生け花のごとく、オブジェに突き刺してゆく様子をビデオで記録しています。
なかでも、2000年1月の銀座で展開した「合法駐車」のプロジェクトは、隅々にまで増山らしい完璧主義が行き渡った自信作でした。銀座のギャラリー前の路上に自作オブジェを荷台に載せたトラックを路上パーキングに駐車させ、増山はガードマンのような制服・制帽を着用した架空の「合法駐車」部隊を組織。展覧会期中、部隊は60分ごとに「本部」であるギャラリーから出動し、パーキングメーターの切れる寸前にトラックを移動、数分後に再び同じ場所に駐車させる作業を繰り返すパフォーマンスを行いました。まさに「ミッション・インポッシブル」さながら、周到な計画と厳密なタイムスケジュール、そして大がかりな道具立てによって展開された「合法駐車」は、道路交通法を逆手に取った大胆不敵なアイデアや、ギャラリーと公共空間をリンクさせるユニークなアプローチなどとも相まって、まさしく増山士郎の代表的プロジェクトというべきでしょう。
さて、今回の現代美術製作所における特別企画「増山士郎作品集1996-2003」は、展覧会全体をいわば小説家のアンソロジーのように構成、「合法駐車」を含め、増山士郎がこれまで手がけた代表的プロジェクトをみなさんにまとめてご紹介するほか、「多摩川河川敷プロジェクト」のバージョンアップ版として、京都の鴨川で実施を予定している「鴨川プロジェクト」の計画も初公開いたします。
曽我高明(現代美術製作所、ディレクター)